【睡眠の質UP】枕の高さが健康に与える影響と理想の選び方

生活

睡眠は私たちの健康維持に欠かせない要素です。十分な睡眠を取ることで、体は疲労回復し、脳は休息を取り、心身ともにリフレッシュされます。しかし、睡眠の質が悪ければ、翌日の活力が低下し、集中力や作業効率の低下を招きます。また、長期的には生活習慣病のリスクが高まるなど、健康面でも深刻な影響が出ます。

睡眠の質を左右する要因は様々ありますが、その中でも枕の役割は非常に大きいと言えます。適切な枕を選ぶことで、快適で質の高い睡眠を得ることができます。一方で、不適切な枕を使い続けると、首や肩の痛み、いびき、無呼吸症候群など、様々な睡眠障害や健康被害を引き起こす可能性があります。

本記事では、最新の研究結果から明らかになった「枕の高さと健康との関係」について解説します。また、理想的な枕の高さと選び方についても詳しく説明していきます。自分に合った枕を見つけることで、質の高い睡眠を手に入れ、健康的な生活を送ることができるでしょう。

枕の高さと脳卒中の関係

椎骨動脈の説明

椎骨動脈は、首の骨(頚椎)の中を通り、脳底部に至る極めて重要な血管です。この動脈から分岐する脳底動脈が、人間の生命維持に不可欠な脳幹部を栄養しています。椎骨動脈に何らかの異常が生じると、脳底動脈が圧迫され、脳への血流不全を引き起こします。その結果、脳梗塞などの脳卒中の危険が高まるのです。

椎骨動脈は首の骨の中を通っているため、首への負荷が直接影響を与えます。首を長時間同じ状態に保つと、椎骨動脈が圧迫やねじれを受けて血流障害が生じやすくなります。このように、生理的に無理のある姿勢を取り続けることが、椎骨動脈障害の一因となっているのです。

殿様枕症候群(高い枕)と椎骨動脈解離の関連

高い枕を使用すると、首の角度が極端に曲がった状態が続きます。このような姿勢が長時間持続すると、椎骨動脈に過剰なストレスがかかり、動脈硬化が進行したり、ねじれや圧迫を受けて血流障害を引き起こします。この症状は「殿様枕症候群」と呼ばれています。

殿様枕症候群は、かつて武士が髪型を乱さないために使用していた高く硬い枕に由来する呼び名です。しかし、現代においても一般家庭で高い枕を好む習慣が残っており、枕の高さと椎骨動脈障害との関連が指摘されるようになったのです。

高い枕を使うだけでなく、スマートフォンやタブレットを枕もとで使う現代的な生活習慣も、首への負担を高める一因となっています。画面を見やすくするために、枕を高く重ねたり、クッションを敷いて高さを上げたりする習慣が、椎骨動脈への悪影響を及ぼしているのかもしれません。

12cm以上の枕の使用と椎骨動脈帰りリスクの増加

2024年に国立循環器病研究センターで行われた大規模な調査研究では、枕の高さと椎骨動脈障害の関連性が明らかになりました。この研究では、12cm以上の高い枕を使用している人は、そうでない人に比べて椎骨動脈障害のリスクが2.8倍高いことが判明しました。さらに、15cm以上の極端に高い枕を使っている人では、なんと10.6倍ものリスク増加が確認されたのです。

研究チームは椎骨動脈障害のない対照群も設け、枕の高さと椎骨動脈障害との関係を詳細に検証しました。その結果、枕が高ければ高いほど、椎骨動脈障害のリスクが指数関数的に高まることが明らかになったのです。警鐘を鳴らすべき重大な発見と言えるでしょう。

硬い枕で影響が顕著

さらに、この研究では枕の硬さも重要な要因であることが明らかになりました。枕が硬い程、枕の高さと椎骨動脈障害の関係はより顕著であり、柔らかい枕を使うとそのリスクが緩和される傾向にあるのです。

硬い枕を使うと、首の角度が極端に曲がった状態が固定されやすくなります。固定された異常な姿勢が長時間持続すれば、椎骨動脈へのストレスは極めて高くなります。一方で柔らかい枕なら、首の動きに枕が追従しやすいため、椎骨動脈への負担が和らぐと考えられています。

この研究結果から、かつて武士が愛用していた高く硬い枕が、現代人の椎骨動脈障害のリスク要因であることが改めて裏付けられました。当時は髪型を崩さないことが最優先され、健康面での危険性が見過ごされていたのかもしれません。

研究チームは、比較的若年層の椎骨動脈障害患者の約10%が、高い枕の使用が原因だったと推測しています。若年層での発症を防ぐためにも、適切な枕の選択は重要なのです。

理想的な枕の高さ

個人差があるが、4〜6cmが適切とされる

脳卒中リスクを減らし、快適な睡眠を取るためには、理想的な枕の高さを選ぶことが重要です。一般的には、個人差はあるものの、4〜6cmが適切な高さとされています。

国立循環器病研究センターの調査によると、かつては8〜10cmの比較的高い枕が好まれていた時期もありました。しかし、長年の経験から伝承されてきた言葉に「寿命3寸楽4寸」というものがあり、命に最もよい枕の高さは9cm前後であると言われてきました。近年の研究結果がこの言い伝えを裏付けたと言えるでしょう。

枕の高さが個人差があるのは、体格や首の長さなどが人それぞれ異なるためです。同じ高さの枕でも、人によって窮屈に感じたり、逆に低すぎて不快に感じたりします。自分の体に最もフィットする枕を選ぶことが何より大切なのです。

6cmが首や肩への負担が少ない

首や肩への負担が最も少ないのは、枕の高さが6cmの場合だと報告されています。この高さなら、首に無理な角度がつきにくく、頚椎や肩への圧迫も軽減されます。長時間同じ姿勢を取り続けても、負担は最小限に抑えられるでしょう。

首は頭部の重さである約5kgの負荷を支えている部位です。不適切な枕の高さでは、この負荷がかかりすぎて、首や肩に痛みや痺れが生じやすくなります。6cmの枕なら、この負荷を適度に分散させることができ、長時間の就寝でも疲労が溜まりにくいと考えられています。

また、就寝中に寝返りを打つ際にも、6cmの枕であれば首への負担は軽減されます。寝返りの度に首を大きく捻ったり曲げたりする必要がないため、椎骨動脈へのストレスも抑えられるのです。

6.5cmで頭部を少し低くすると脊髄への負担が軽減

一方、頭部の位置を少し低くすると、脊髄への負担をさらに軽くできるとの研究結果もあります。具体的には、後頭部から頚部にかけての高さを6.5cmとし、頭部の位置を若干低くすることで、脊柱管への圧迫を和らげられるそうです。

脊柱管とは、脊椎の中を通る管状の空間のことで、ここを脊髄が通っています。頭部が高い位置にあると、重みで脊柱管を圧迫してしまい、脊髄に負担がかかります。頭部の位置を少し低くすることで、この負担を軽減できるのです。

体型に合わせて6.5cmから微調整することで、首や肩への負担と脊髄への負担を同時に軽減できます。首の負荷は6cm前後で抑え、頭部の高さを少し下げることで、全身への負担を最小限に抑えられるといった具合です。

このように、理想的な枕の高さには個人差がありますが、ほとんどの場合6〜6.5cm前後が最適と考えられています。高すぎても低すぎても、首や肩、脊椎に無理な負荷がかかってしまうため、体に合わせた微調整が何よりも大切なのです。

枕が低すぎる弊害

いびきの原因になる可能性

枕の高さが理想的な範囲を外れると、さまざまな問題が生じる可能性があります。特に低すぎる枕は、いびきの原因になったり、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高めてしまうため注意が必要です。

低い枕を使うと、頭部が反り返った姿勢になりがちです。この状態が続くと、舌根が気道を塞ぎやすくなり、いびきの発生頻度が高まります。いびきは生体リズムを乱す大きな原因のひとつで、睡眠の質を著しく低下させてしまいます。

さらに酷い場合、一時的に呼吸困難に陥る睡眠時無呼吸症候群を引き起こすリスクもあります。これは重大な健康被害の一因となり、心疾患や脳血管疾患などを誘発する可能性もあるため、注意が必要です。

適切な高さで軌道を開き、口呼吸も防ぐ

いびきや睡眠時無呼吸症候群は、枕が低すぎるだけでなく、高すぎる場合も引き起こしかねません。そのため、寝る時の姿勢を正常に維持し、気道を確保するために、適切な高さの枕を選ぶ必要があります。

理想的な高さの枕を使えば、うつ伏せや側臥位でも気道が開かれた状態を維持できます。これにより、いびきの発生を最小限に抑えられるだけでなく、口呼吸にならずに鼻呼吸が保たれるため、睡眠の質が向上するのです。

気道が塞がれにくい姿勢を保つことで、睡眠時無呼吸症候群のリスクも低減されます。夜間に酸素欠乏状態に陥ることなく、熟睡できるようになるでしょう。

このように、枕の高さを適切に保つことが、良質な睡眠を得るためのカギとなります。枕が極端に高すぎたり低すぎたりすると、いびきや無呼吸などの睡眠障害につながり、健康被害を引き起こす可能性があるのです。

自分に合った枕を選ぶポイント

肩が布団に接する高さ

自分に最適な枕の高さを選ぶ際の目安として、「肩が布団に接する高さ」があげられます。肩がベッドから浮いている状態だと、首に無理な力がかかり、痛みや痺れの原因になりかねません。

枕の高さは個人差がありますが、これくらいの高さであれば、ほとんどの人が無理のない自然な姿勢を取れるはずです。しかし、あくまで目安に過ぎず、実際に就寝して具合を確かめる必要があります。

肩が布団から浮いた状態で寝返りを打つと、急激に首に負荷がかかります。長時間そのままの姿勢を取り続けていては、首や肩の痛みにつながる可能性があります。自分にぴったりの高さを見つけるまで、少しずつ調整していきましょう。

首に圧迫感がない

枕の高さを調節する上で、もうひとつの大切な判断基準が「首に圧迫感がないこと」です。寝返りを打った際に、首に力が入る感じがあれば高さが合っていません。

適切な高さの枕なら、首に無理な力がかからず、リラックスした状態で寝られるはずです。圧迫感があると、血流が滞り、肩こりや首の痛みを引き起こす可能性があります。

寝始めは気づかないものの、朝になって首が痺れていたり、肩がこわばっていたりする場合は、枕が高すぎる可能性があります。就寝中の感触に注意を払い、少しずつ高さを下げて調整しましょう。

頭の位置が安定している

さらに、「頭の位置が安定している」ことも、枕を選ぶ上での重要なポイントです。頭が枕からすべり落ちたり、寝返りを打つ度に頭の位置がずれていたりすると、睡眠を妨げてしまいます。

適切な形状と高さの枕なら、頭の位置を安定させられます。寝返りを打っても、頭がしっくりと枕の上に収まり、動いたりずれたりすることはありません。これにより、睡眠を中断されることなく、熟睡できるようになります。

頭の位置が不安定だと、睡眠のサイクルが乱れ、夜間頻尿や眠気過剰などの症状が出る可能性もあります。睡眠の質が低下すれば、翌日の活力にも影響を及ぼしかねません。頭の位置が安定する枕を選ぶことで、こうした悩みを解消できるでしょう。

5mm単位の高さ調整が重要

最適な枕選びでは、高さの調整幅が小さいことも重要なポイントです。人間工学に基づく研究によれば、たった5mm程度の高さの違いで、睡眠の質や翌日の身体の調子が大きく変わるそうです。

つまり、自分に最適な枕の高さを見つけるには、5mmという細かい単位で調整していく必要があるのです。市販の枕は高さが決まっているため、傾斜枕や専用の高さ調整パッドなどで微調整することをおすすめします。

特に首や肩に痛みがある場合は、5mmの違いが状態の改善に大きく影響を与えます。医療現場でも使われるくらい、高さのコントロールが重視されている点に注目すべきでしょう。

このように、枕を選ぶ際のポイントは、肩の位置、首への圧迫感、頭の安定性、そして高さの微調整機能です。これらを意識しながら、自分に最適なフィット感を追求していきましょう。少しずつ調整を重ね、ぐっすり眠れる理想の枕を見つけられるはずです。

最後に

睡眠の質を左右する大切な要素の一つが枕の高さです。今回の研究により、12cm以上の高い枕を使うと追こと動脈帰りのリスクが高まることが示されました。一方で低すぎる枕もいびきの原因となる可能性があります。

理想的な枕の高さは個人差がありますが、一般的には4〜6cmが適切とされています。首や肩への負担を軽減する6cm、脊髄への負担を和らげる6.5cmの高さなども目安になります。自分に合った枕を選ぶためのポイントは、肩が布団に接する高さ、首に圧迫感がない、頭の位置が安定していることです。微調整が重要なので、5mm単位で高さを変えて最適な枕を見つけましょう。

適切な枕を使うことで、追こと動脈帰りのリスクを下げ、いびきや睡眠時無呼吸の予防にもつながります。質の高い睡眠は健康維持に欠かせません。自分に合った理想的な枕を選び、健やかな睡眠生活を送りましょう。

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