睡眠の質を上げる飲み物7選 | 医師が解説するおすすめドリンクとNGな飲み物

生活

入眠前の飲み物が重要な理由

現代社会は夜型化が進み、睡眠不足に悩む人が後を絶ちません。ストレスの多い毎日、スマートフォンの普及による夜更かし、不規則な生活リズムなどが主な要因と考えられています。国民の3人に1人が睡眠障害に悩まされているという深刻な状況です。

睡眠不足は健康に深刻なダメージを与えかねません。短期的には注意力や集中力の低下、イライラ感や倦怠感の増大など、日常生活に支障をきたします。長期的にみれば、睡眠不足は肥満や生活習慣病、心身の不調を引き起こす原因ともなり得ます。十分な睡眠を確保することは、健康的な生活を送る上で極めて重要なのです。

ただし、睡眠の量を単純に増やせば良いわけではありません。熟睡から目覚めまで、眠りのプロセス全体を通して質の高い休息を得られるかどうかが何より大切です。質の良い睡眠を確保するための方策の1つが、入眠前の適切な飲み物の摂取です。

入眠前の飲み物選びを間違えれば、かえって熟睡を妨げかねません。一方で、賢明な選択をすれば、体の準備状態を整え、スムーズな入眠と上質な睡眠を促進してくれます。睡眠の質を高めるための秘訣は、入眠前の飲み物の適切な選択にあるのです。

本記事では、睡眠の質を高める効果が期待できる飲み物を、医師の見地から徹底解説します。また逆に控えるべき飲み物についても触れ、質の高い睡眠を得るためのベストな飲み物選びをご紹介します。

入眠前の飲み物を飲むポイント

就寝前の水分補給が大切

質の高い睡眠を得るためには、就寝前の適切な水分補給が欠かせません。人間は睡眠中に体温調節のため、およそ350ml(コップ1~2杯分)の水分を汗などの形で失うと言われています。この水分不足が生じると、体温が適切に下がらず、睡眠を促進するメラトニンホルモンの分泌が阻害されてしまいます。

メラトニンは睡眠・覚醒のリズムを調節する重要なホルモンです。メラトニン分泌が妨げられると、熟睡できず睡眠の質が低下する可能性が高くなります。適度な水分が体内に存在することで、体温の低下が円滑に進み、メラトニンが十分に働きます。その結果、自然な眠気が訪れ、質の高い睡眠につながるのです。

ただし、水分補給のタイミングが遅すぎると、睡眠中に度々トイレに起きる原因となり、熟睡を妨げかねません。就寝の2~3時間前を目安に、適度な水分補給を心がけましょう。

中心1時間前から数時間前は暖かい飲み物を

質の高い睡眠を得るには、飲み物の温度にも気を配る必要があります。就寝の1時間前から数時間前までは、暖かい飲み物を摂ることがおすすめです。

暖かい飲み物を飲むと、一時的に体温が上昇します。体温の上昇は交感神経を優位にさせる作用があり、心身をリラックスした状態へと導きます。その後、体温が徐々に低下していく過程で、自然と眠気が訪れるようになります。つまり、暖かい飲み物を摂ることで、スムーズな入眠を促進できるのです。

ただし、暖かい飲み物は睡眠の直前ではなく、それ以前に摂るのがポイントです。睡眠直前に温かい飲み物を摂ると、なかなか体温が下がらず、入眠を阻害してしまう恐れがあります。睡眠は体温の低下に合わせて誘発されるため、体が十分に冷えた状態で就寝する必要があるのです。

中心の直前は常温か冷たい飲み物に

暖かい飲み物を摂るのは就寝の1時間前から数時間前までが適していますが、直前になると事情が変わってきます。就寝直前は、常温または冷たい飲み物に切り替えるのがベストな選択肢となります。

睡眠に入る直前の段階では、体温を下げる必要があります。体温が下がることで、睡眠を誘発するメラトニンホルモンの分泌が促進されるからです。温かい飲み物を摂ると、体温の低下が遅れてしまい、スムーズな入眠を阻害することになります。

一方で、常温または冷たい飲み物であれば、体を徐々に冷やす作用があります。水分補給しながらも体温の低下を促進でき、メラトニン分泌を活発化させて自然な眠気を誘発しやすくなるのです。ただし、極端に冷たい飲み物は胃腸に負担をかける可能性がありますので、過度に冷やし過ぎないよう気をつける必要があります。

飲み方や量に気をつける

入眠前の飲み物を上手に活用するには、飲み方や量にも注意を払う必要があります。飲み物の飲みすぎは、睡眠中に度々トイレに起きてしまう原因となり、熟睡を妨げかねません。就寝中の水分失失は最大でもコップ1~2杯程度とされているため、補給量もそれを上回らないよう控えめにしましょう。

飲み方についても、一気飲みするのはお勧めできません。胃に負担をかけるだけでなく、急に体内の水分量が増えすぎると、かえって夜中の尿意を高める恐れがあります。時間をかけてゆっくりと飲むことで、体内への水分の取り込み具合を緩やかにすることができ、睡眠中の尿意を軽減できます。

また、就寝前の飲み物は基本的に水がベストですが、刺激の強い飲み物は避けた方が賢明でしょう。就寝前にカフェインやアルコールを含む飲み物を摂取すると、睡眠の質を著しく低下させる危険性があるためです。

おすすめの入眠前飲み物7選

ミルクココア

ミルクココアは、入眠前の飲み物としてお薦めです。ココアにはテオブロミンという成分が含まれており、自律神経を整える働きがあります。一方、牛乳には nerを 落ち着かせる作用のあるトリプトファンというアミノ酸が含まれています。この2つの効果が相まって、心身をリラックスした状態へと導き、質の高い睡眠を促します。

ただし、市販のココア飲料には砂糖が多量に含まれている場合がよくあります。砂糖の摂取は血糖値の上昇を引き起こし、睡眠の質を低下させる恐れがあります。また、砂糖は虫歯の原因にもなりかねません。ミルクココアを選ぶ際は、純ココア(砂糖不使用)のタイプを選ぶようにしましょう。純ココアであれば、カカオに含まれるポリフェノールが虫歯菌を抑制する効果も期待できます。

ミルクココアはカフェインを微量含んでいるため、入眠を阻害する可能性もあります。そのため、寝付きが悪い方は控えめな量にとどめるのがベストでしょう。

ハーブティー

ハーブティーにはさまざまな種類がありますが、なかでもラベンダー、カモミール、オレンジ、リンデンなどは、自律神経を整えリラックス効果が高いため、就寝前に最適な飲み物と言えます。これらのハーブには、鎮静・鎮痛・抗炎症作用があり、ストレス解消やリフレッシュ効果も期待できます。

ハーブティーの中には、疲労回復や冷え性改善、消化促進などの効果を持つものも多数あります。このようなハーブを組み合わせたブレンドティーも、睡眠の質を高める上で有効でしょう。ただし、ブレンドの中にカフェインを含む茶葉(紅茶、マテ茶など)が入っている場合は避けた方が賢明です。

生姜湯

生姜は体を温める作用があり、特に生姜に多く含まれるジンゲロールという成分には高い体温上昇効果があります。入眠の1時間前までに生姜湯を飲めば、一時的に体温が上がり、心身がリラックスした状態へと導かれます。その後、体温が徐々に下がる過程で、自然な眠気が訪れやすくなるのです。

生姜のリラックス効果を高めるには、牛乳に生姜を混ぜて飲むのもお薦めです。牛乳に含まれるトリプトファンと生姜の相乗効果で、更に心地良い眠りに落ちやすくなります。ただし、生姜は胃腸に負担をかける可能性もあるため、入眠直前の摂取は避けましょう。

トマトジュース

トマトジュースには入眠を促す効果があります。トマトに多く含まれるカリウムには体温を下げる作用があり、暑い夏場の夜などに寝苦しい時には特におすすめの飲み物です。ただし、市販のトマトジュースには砂糖や塩分が多量に含まれているものも多いので、成分表示をよく確認して選ぶ必要があります。

ウォーミングミルク

牛乳は古くから入眠飲料として親しまれてきました。その理由は、牛乳に含まれるトリプトファンというアミノ酸が、リラックス効果とメラトニン分泌を促進するためです。でも、冷たい牛乳だと胃腸に負担がかかる可能性があるので、入眠前には体温程度にあたためた「ウォーミングミルク」がおすすめです。

ウォーミングミルクにはさらに、はちみつやシナモンなどの香味料を加えるとより一層効果的です。はちみつには精神を安定させる作用があり、シナモンには血行を良くする働きがあるためです。ただし、砂糖の摂り過ぎには注意が必要です。

カモミールティー

カモミールは、ハーブティーの代表格と言えるほどリラックス効果に優れています。カモミールには鎮静・鎮痛・抗炎症作用があり、不眠やストレス解消に役立ちます。さらに、カモミールにはアプリゲニンという成分が含まれており、これがベンゾジアゼピン系の薬物と同様に不安を和らげる働きがあるのです。

カモミールティーの飲み方はお湯で5~7分ほど浸しておくだけで簡単に用意できます。ストレスが溜まった日などに1杯飲めば、気分をリフレッシュできるでしょう。ただしカモミールにはアレルギー反応を引き起こす可能性もあるため、念のため飲み始めは少量から始めるのが賢明です。

バナナミルク

バナナミルクは疲労回復と熟睡に効果的な飲み物と言えます。バナナにはトリプトファンをはじめ、マグネシウム、ビタミンB6などの睡眠を促す栄養素が豊富に含まれています。一方、牛乳は先にも述べたようにトリプトファンを含むので、この2つを組み合わせることで相乗効果が期待できるのです。

バナナミルクは、バナナを牛乳かソイミルクなどに溶かすだけの簡単な作り方です。ストレス解消やリラックス効果を求める場合は、さらにハチミツを加えるのもおすすめです。ただしバナナには糖分が多く含まれているため、糖尿病の方などは控えめの量にしましょう。

入眠前に控えるべき飲み物

カフェインの入った飲み物

コーヒー、紅茶、ココア(一部)などにはカフェインが含まれており、入眠前に摂取すると睡眠の質を低下させる危険があります。カフェインには交感神経を刺激し、心身をアクティブな状態へと導く作用があるためです。入眠を促す副交感神経の働きとはまさに逆の効果を持つと言えます。

さらにカフェインには利尿作用もあり、睡眠中に何度もトイレに起きて熟睡を妨げてしまう原因にもなりかねません。睡眠の質を高めるためには、就寝4~5時間前からカフェインの摂取を控えることが賢明でしょう。

特にカフェインの感受性が高い人は注意が必要です。カフェイン過剰摂取は不眠やめまい、頭痛、不安感などの症状を引き起こす可能性もあります。カフェイン含有飲料は控えめの量に留めるよう心がけましょう。

アルコール飲料

就寝前にアルコールを摂取すると、一時的には眠りに落ちやすくなる効果があります。しかしアルコールは覚醒を抑制する一方で、睡眠の質を著しく低下させてしまいます。夜中に度々目を覚まし、熟睡できなくなる原因となるのです。

アルコールには強い利尿作用もあり、睡眠中の尿意を高めてしまいます。結果として、熟睡を妨げられ睡眠の質が低下してしまうのです。極端な場合には、アルコール性睡眠時無呼吸症候群を引き起こす危険もあります。

仮に就寝前にアルコールを摂取したい場合でも、過剰な摂取は控えめにしましょう。お酒と一緒に水分も十分に摂り、おつまみに脂質やタンパク質を含む食べ物を一緒に取ると、アルコールの影響を和らげる効果が期待できます。

飲み物以外で睡眠を促す方法

就寝1時間前に入浴する

入眠前の入浴は、質の高い睡眠を得るための有効な手段です。適度な温度(40度前後のぬるま湯)で30分程度入浴すると、一時的に体温が上昇します。体温の上昇は副交感神経を優位にさせ、心身がリラックスした状態に導かれます。

その後、体温が徐々に下がっていく過程で、眠気が訪れ、スムーズな入眠が促されるのです。つまり、入浴によって体温の一時的な上昇と低下が引き起こされ、メラトニンの分泌が活発化し、睡眠が誘発されやすくなるわけです。

ただし、睡眠の直前に入浴するのは避けた方が賢明です。直前の入浴では体温の低下が間に合わず、かえって入眠を阻害してしまう恐れがあります。就寝の1時間前が最適なタイミングと言えるでしょう。

リラックスできる睡眠環境を整える

質の高い睡眠には、飲み物や入浴といった体の準備だけでなく、快適な睡眠環境を整えることも欠かせません。理想的な睡眠環境とは、室温25~27度(夏期)、15~18度(冬期)で、湿度は50~60%程度が望ましいとされています。

また、睡眠を支配するホルモンであるメラトニンは、光の暴露によって分泌が阻害されます。そのため、眠りに付く1時間前からは部屋の照明を消し、外からの光が入りづらいよう工夫しましょう。40デシベル以下が望ましい静かな音環境も重要です。

さらに、快適で睡眠を誘発しやすい寝床環境を整えることも大切です。理想的な寝床の温度は30度前後とされており、布団の選び方やベッドメーキングの工夫で最適化を図ることができます。ストレス解消やリフレッシュのための植物の香りなども、心地よい睡眠環境に役立ちます。

最後に

本記事では、医師の見地から、入眠前の適切な飲み物選びの重要性と、おすすめの飲み物についてご紹介してきました。

おすすめの飲み物は以下の通りです。

  • ミルクココア(砂糖不使用のタイプ)
  • ハーブティー(カモミール、ラベンダーなど)
  • 生姜湯(牛乳に生姜を混ぜるのもおすすめ)
  • トマトジュース(低糖・低塩分のものを選ぶ)
  • ウォーミングミルク(砂糖控えめで香味料入りが良い)
  • カモミールティー(不安やストレスの解消に)
  • バナナミルク(バナナと牛乳の相乗効果で熟睡へ)

一方、入眠前に控えるべき飲み物としては、カフェインを含むコーヒーや紅茶、アルコール飲料などが挙げられます。これらは睡眠の質を低下させる危険があります。

入眠を促す飲み物の選び方は人それぞれ異なり、一概に「これが最適」と言えるものはありません。体質や嗜好、生活習慣によっても違いが出てくるでしょう。試行錯誤を重ね、自分に最も適した飲み物を見つけていくことが何より重要です。

ただし、マメな水分補給と就寝前の温度調節に気をつけること、そして睡眠環境を整える心がけは、誰もが実践すべきポイントだと言えます。質の高い睡眠に向けて、本記事で解説したことを参考に、ぜひ工夫を重ねてみてください。

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